清少納言の「発達心理学」
日の下に新しきものなしと言いますが、時代が古かろうと理論化されていなくとも、洞察力や共感力をもとに重要な法則性に気付く人は気付きます。そういった人は現代でも風化していないような表現を残しています。
本日の主題は「愛されることの大切さ」
扱う古典は「春はあけぼの」の序文で知られる清少納言さんの枕草子です。
今日の発達心理学では母(保護者)との信頼関係が、「基本的信頼」という形で子どもの中に残り、その後他者との関係を結ぶことができるということが言われています。
ここで母との信頼関係の構築に失敗すると「他人を信じられなくなる」という恐ろしい話もさらっと流されます。
誰かを愛するには「まず愛される」という前提が必要だということです。
清少納言さんは下記のように綴っています。
世の中に、猶、いと心憂き物は、人に、憎まれむ事こそ、有るべけれ。
(中略)
良き人の御事は、更なり、下種などの程も、親などの、愛しうする子は、目立ち、見立てられて、労しうこそ覚ゆれ。
清少納言「枕草子」第253段より
(訳 この世で何と言っても辛いことは他者に憎まれる事ではないでしょうか。高貴な方は言うまでもないですが、例え貧しい人であっても、親などが可愛がっている子どもは、注目され、見立てられるので(親類以外からも)好まれるのでしょう。)
彼女は現代で言うところの「都のエリート女性官僚」であり、貧しい人への差別的な表現も目立ちますが、しかしながら「多くの人から愛される人は、親からの深い愛情を受けており、貴賤は関係ない」と見ています。貧しい人への強い偏見がある人が貴賎は関係ないと述べるのは、重大なことです。日々の洞察から、固定観念を超えて素直にそう感じたのでしょう。
「親が深い愛情をかければ良い子が育つなんて当たり前」
と言われる人がいるかもしれませんが、その当たり前の事が出来ていないから社会に問題が溢れているのではないでしょうか。
大事な言葉や理論は「繰り返し何度もしつこいぐらいに」伝えていく必要があるのです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
それでは良き一日を、良き夢を!
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